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特集

<第3話(だいさんわ)>金星(きんせい)をおおう雲(くも)そのものに 大(おお)きな謎(なぞ)が、かくされていた

一番星を目指せ(第3話タイトル)金星をおおう雲そのものに 大きな謎が、かくされていた

―― 金星(きんせい)ぜんたいをおおっている雲(くも)は、なんだかスゴイものだそうですね? 地球(ちきゅう)の雲(くも)と比(くら)べながら教(おし)えてください。

中村(なかむら) まず原料(げんりょう)からいきましょう。地球(ちきゅう)の雲(くも)は水(みず)や氷(こおり)の粒(つぶ)でできていますが、金星(きんせい)の雲(くも)は「硫酸(りゅうさん)」です。

平成16年7月福井豪雨の降雨の様子-熱帯降雨観測衛星TRMMによる

―― 硫酸(りゅうさん)

中村(なかむら) しかも高度(こうど)でいうと45〜70km前後(キロメートルぜんご)のところに位置(いち)しています。地球(ちきゅう)の雲(くも)は高(たか)くても10km(キロメートル)ちょっとですから、かなり高(たか)い。そして、ぶ厚(あつ)いんです。

 ※地球(ちきゅう)の場合(ばあい)、集中豪雨(しゅうちゅうごうう)をもたらす積乱雲(せきらんうん)のてっぺんでも最大(さいだい)でも13km程度(キロメートルていど)。それより上(うえ)では大気(たいき)の対流(たいりゅう)が起(お)こらず、雲(くも)も発生(はっせい)しない。
>> 参考(さんこう)平成(へいせい)16年(ねん)7月福井豪雨(がつふくいごうう)の降雨(こうう)の様子(ようす)-熱帯降雨観測衛星TRMM(ねったいこううかんそくえいせいトリム)による

―― 違(ちが)うことだらけですね。

中村(なかむら) さらにその動(うご)きが謎(なぞ)に満(み)ちているんです。「スーパーローテーション」という現象(げんしょう)があるのですが……。

金星をとりまく暴風、スーパーローテーション

―― 直訳(ちょくやく)すると「すごいローテーション」……。ローテーションって、何(なん)ですか?

中村(なかむら) 「回転(かいてん)」です。雲(くも)がすごい勢(いきお)いで金星(きんせい)を回(まわ)っているんです。秒速(びょうそく)100m(メートル)ほどの猛(もう)スピードで、自転(じてん)と同(おな)じ方向(ほうこう)に回転(かいてん)しています。

―― 台風(たいふう)のときの暴風(ぼうふう)だって秒速数十(びょうそくすうじゅう)メートル……。

中村(なかむら) 地球(ちきゅう)でもジェット気流(きりゅう)と呼(よ)ばれるような速い風(はやいかぜ)はありますが、金星(きんせい)の場合(ばあい)それが金星(きんせい)ぜんたいで起(お)きている点(てん)が不思議(ふしぎ)なんです。1960年代頃(ねんだいごろ)からのことですが、地球(ちきゅう)から特殊(とくしゅ)な望遠鏡(ぼうえんきょう)で見(み)ると、雲(くも)がつくる模様(もよう)を観測(かんそく)することができ、ものすごく速く雲(はやいくも)が動(うご)いているようだと言(い)われていました。それ以前(いぜん)にもアマチュアの天文家(てんもんか)の人(ひと)がそれを見(み)つけていたそうですが、「ありえない!」と疑問視(ぎもんし)する意見(いけん)も多(おお)かった。でも実際(じっさい)に探査機(たんさき)が行って調(いってしら)べ、「4日(か)で金星(きんせい)をひと回(まわ)りするほどの猛(もう)スピードだ」ということが確(たし)かめられた。

 ※普通(ふつう)に雲(くも)を見(み)たのでは明(あか)るすぎて真っ白(まっしろ)になり模様(もよう)も動(うご)きも分(わ)からない。可視光(かしこう)より波長(はちょう)の短(みぢか)い「紫外線(しがいせん)」で観測(かんそく)すると見(み)えてくる。

―― なぜそれほどの猛(もう)スピード?

中村(なかむら) そこが謎(なぞ)なんです。普通(ふつう)に考(かんが)えると、金星(きんせい)の自転(じてん)に引(ひ)きずられて大気(たいき)も回転(かいてん)している、と考(かんが)えるのがいちばん自然(しぜん)です。コップの中(なか)の水(みず)が、コップを回(まわ)すことでつられて回(まわ)る、というのと同(おな)じメカニズムです。

―― では、金星(きんせい)の自転(じてん)がものすごく速(はや)いから、大気(たいき)や雲(くも)もそれにつられて速(はや)く回(まわ)っている?

中村(なかむら) というわけではないから、謎(なぞ)なんです。むしろ金星(きんせい)の自転(じてん)はすごく遅(おそ)く、1回転(かいてん)に約(やく)243日(にち)もかかるんです。赤道(せきどう)あたりの地面(じめん)が動(うご)く速度(そくど)を秒速(びょうそく)に換算(かんさん)すると6〜7m程度(メートルていど)。でも雲(くも)の回転(かいてん)は秒速(びょうそく)100m(メートル)です。これほどの差(さ)がなぜ生(う)まれているのか、説明(せつめい)がつかない。

―― では「金星(きんせい)は昔(むかし)、ものすごく速(はや)く自転(じてん)していたけれど、それが急(きゅう)に遅(おそ)くなった。大気(たいき)と雲(くも)だけが当時(とうじ)の勢(いきお)いのまま速(はや)く回(まわ)っている」という可能性(かのうせい)も……、ないですよね。

中村(なかむら) そうですねぇ(苦笑(くしょう))。そもそも地球(ちきゅう)と同(おな)じほどの大(おお)きさと重(おも)さの金星(きんせい)の自転(じてん)が、どういうメカニズムで急(きゅう)に速(はや)くなったり遅(おそ)くなったりするか……、ちょっと説明(せつめい)するには無理(むり)がありますね(笑(わらい))。いずれにせよ仮説(かせつ)としてはいくつかありますが、まだ「これは!」という説(せつ)は出(で)ていないんです。

 ※金星(きんせい)と地球(ちきゅう)の大(おお)きさと重(おも)さ:地球(ちきゅう)を100とすると、金星(きんせい)の大(おお)きさは95、重(おも)さは82ほど。これは2歳(さい)ほど年(とし)の離(はな)れた小学生(しょうがくせい)のきょうだいぐらいの体格差(たいかくさ)です。ちなみに火星(かせい)は大(おお)きさで地球(ちきゅう)の半分(はんぶん)、重(おも)さで10分(ぶん)の1ですから、きょうだいというよりはペットと飼い主(かいぬし)ほどの差(さ)になります。しかも金星(きんせい)の自転(じてん)の向(む)きは、地球(ちきゅう)や火星(かせい)とはまったく逆(ぎゃく)なのです!
一番星を目指せ(第2話)地球一番星を目指せ(第2話)アメリカの「マジェラン」が撮影した金星(提供:NASA/JPL)
アメリカの「マジェラン」が撮影(さつえい)した金星(きんせい)(提供(ていきょう):NASA/JPL)

―― その謎(なぞ)を決着(けっちゃく)させるため、「あかつき」(PLANET-C(プラネット・シー))が金星(きんせい)に?

中村(なかむら) いちばんの目的(もくてき)がそれです。謎(なぞ)を解き明(ときあ)かすのは地上(ちじょう)のわれわれの仕事(しごと)ですが、そのために「あかつき」(PLANET-C(プラネット・シー))に、これまでにないほど詳(くわ)しく雲(くも)の動(うご)きを調(しら)べてもらいます。それを通(つう)じ、いくつかある仮説(かせつ)のどれがもっとも確(たし)からしいか、判定(はんてい)を下(くだ)す決定的(けっていてき)な事実(じじつ)が見(み)つけられればと思(おも)っています。あるいはまだ誰(だれ)も気が付(きがつ)いていないうようなメカニズムで動(うご)いているのかもしれませんしね。

 ※土星(どせい)の衛星(えいせい)タイタンでも、自転(じてん)の10倍(ばい)の速(はや)さで動(うご)く大気(たいき)が観測(かんそく)されているそうです。金星(きんせい)と同(おな)じしくみなのかどうなのかはまだ分(わ)かりませんが、この「スーパーローテーション」は、他(ほか)の星(ほし)でもけっこうありふれた現象(げんしょう)なのかもしれません。

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