おといあわせサイトマップJAXAクラブトップ

JAXAクラブ

ふりがなボタン文字サイズおおきくふつうけんさく
特集

<第5話(だいごわ)>論争を終(ろんそうをお)わらせる動かぬ証拠(うごかぬしょうこ) 金星の稲妻(きんせいのいなずま)をつかまえろ

一番星を目指せ(第5話タイトル)論争を終わらせる動かぬ証拠 金星の稲妻をつかまえろ

―― 5台目(だいめ)のカメラが、またすごいものらしいですね。

中村(なかむら) LAC、雷・大気光(かみなり・たいきこう)カメラと呼(よ)んでいます。観測(かんそく)する波長域(はちょういき)は可視光(かしこう)、つまり我々(われわれ)の目(め)に見(み)える領域(りょういき)の光(ひかり)なんですが、撮り方(とりかた)がかなり特殊(とくしゅ)なカメラなんです。

―― そもそも金星(きんせい)に雷(かみなり)は、あるんですか?

中村(なかむら) そこなんですよ。今(いま)までの探査機(たんさき)や地上(ちじょう)からの観測(かんそく)で「それらしいもの」はあるとされていたのですが、「いや、ない」という人(ひと)もいた。金星(きんせい)の雷(かみなり)は惑星科学者(わくせいかがくしゃ)の間(あいだ)でも20年来(ねんらい)の論争(ろんそう)になっているテーマだったんです。それを確(たし)かめに行(い)くのも、「あかつき」の大(おお)きなミッションのひとつなんです。

―― では雷(かみなり)があるかないかで、何(なん)が変(か)わってくるんですか?

(第5話)雷が起きるまで(IPA教育用画像素材集)

中村(なかむら) まず、地球(ちきゅう)で起(お)こっている雷(かみなり)のメカニズムをおさらいしますよ。雲(くも)の中(なか)で氷(こおり)の粒(つぶ)が上下(じょうげ)に動(うご)くことで静電気(せいでんき)が生(しょう)じ、そこでバチッと火花(ひばな)が飛(と)ぶのが雷(かみなり)です。金星(きんせい)でも雷(かみなり)が起(お)こっているとすれば、そこで動(うご)いているのは氷(こおり)ではなく硫酸(りゅうさん)の粒(つぶ)のはず。そしてそこには、大気(たいき)の上下(じょうげ)の動(うご)きもあると分(わ)かるわけです。(画像(がぞう):雷(かみなり)が起(お)きるまで<IPA教育用画像素材集(きょういくようがぞうそざいしゅう)>)

>> 【参考(さんこう)(かみなり)が起(お)きるまで(動画(どうが)(※JAXAクラブから離(はな)れます)

―― どうやってそれをカメラに?

中村(なかむら) まず太陽(たいよう)の当(あ)たっている昼(ひる)の側(がわ)ではなく、暗(くら)い夜側(よるがわ)でないと稲妻(いなずま)は撮(と)れない。雲(くも)が明(あか)るすぎて見(み)えないのは、しょうがない。だから夜側(よるがわ)から金星(きんせい)をねらいます。でもこんどはその背後(はいご)には太陽(たいよう)がある。明(あか)るい太陽光(たいようこう)が撮影(さつえい)のじゃまにならないよう、このカメラは性能(せいのう)の良(よ)いフード(ひさしや帽子(ぼうし)のつばのような役割(やくわり)をする)を備(そな)えています。そして撮(と)れるとするなら、どこで起(お)こり、どんなふうに成長(せいちょう)し、どう消(き)えていったかを、くわしく写(うつ)しとめたい……。

―― でも稲妻(いなずま)って一瞬(いっしゅん)のできごとですよね。

(第5話)「あかつき」イラスト(提供:池下章裕)

中村(なかむら) ええ、人間(にんげん)の目(め)で稲妻(いなずま)が見(み)えるのは、残像(ざんぞう)という現象(げんしょう)があるからで、実際(じっさい)に起(お)こっている時間(じかん)はごく短(みじか)いものです。だから超高速(ちょうこうそく)シャッターで1秒間(びょうかん)に5万回撮影(まんかいさつえい)することにしました。稲妻(いなずま)を撮(と)れるか?「あかつき」イラスト(提供(ていきょう):池下章裕(いけしたあきひろ)

―― 1秒(びょう)5万回(まんかい)って……、多(おお)すぎません? 30分(ぷん)ちょっと撮(と)ったら1億枚(おくまい)ですよ。

中村(なかむら) それを全部記録(ぜんぶきろく)したり、地球(ちきゅう)に送信(そうしん)したりするのはとてももったいない話(はなし)です。でも、ときたま稲妻(いなずま)が映(うつ)っている写真(しゃしん)が撮(と)れるかもしれない。そこで、撮(と)りながら判断(はんだん)し、ハズレ写真(しゃしん)はどんどん捨(す)てていき、それらしいものだけ残(のこ)し、地球(ちきゅう)に送信(そうしん)する、という機能(きのう)を持(も)たせています。

―― まさに「数打(かずう)ちゃ当(あ)たる」というカメラ。

中村(なかむら) ぜひ当(あ)ててほしいですね。さらに5つのカメラ以外(いがい)にも、特別(とくべつ)な発信器(はっしんき)を積(つ)んでいきます。どう特別(とくべつ)かというと、すごく安定(あんてい)した周波数(しゅうはすう)の電波(でんぱ)を出(だ)せる発信器(はっしんき)なんです。そしてこれをどう使(つか)うかというと、「あかつき」が地球(ちきゅう)から見(み)て金星(きんせい)の影(かげ)に隠(かく)れるときや出(で)てくるときに、「あかつき」からの電波(でんぱ)は金星(きんせい)の大気(たいき)をかすめて地上(ちじょう)に届(とど)くことになります。そのときの大気(たいき)の温度差(おんどさ)や成分(せいぶん)の違(ちが)いの影響(えいきょう)を受(う)けて、電波(でんぱ)の周波数(しゅうはすう)がほんのわずかに変(か)わるはず……。それを測(はか)る手段(しゅだん)はあるので、送る側(おくるがわ)の電波(でんぱ)を精密(せいみつ)で安定(あんてい)なものにしておけば、電波(でんぱ)が受(う)けた影響(えいきょう)から、金星(きんせい)の大気(たいき)の性質(せいしつ)を逆算(ぎゃくさん)して求(もと)めることができるはずなんです。

―― むずかしいことやっていますね……。

中村(なかむら) 天文学(てんもんがく)では当たり前(あたりまえ)の手法(しゅほう)ですよ。微弱(びじゃく)な電波(でんぱ)の周波数(しゅうはすう)の、わずかな変化(へんか)を正確(せいかく)にとらえる技術(ぎじゅつ)は、探査機(たんさき)の位置(いち)や速度(そくど)を知(し)るうえ不可欠(ふかけつ)のもの。私(わたし)たちには、長年(ながねん)にわたって探査機(たんさき)を運用(うんよう)してきたという、しっかりした蓄積(ちくせき)がありますからね。

 ※電波(でんぱ)を送受信(そうじゅしん)するアンテナも、日本独自(にほんどくじ)の発明品(はつめいひん)。東京工業大学(とうきょうこうぎょうだいがく)の後藤尚久先生(ごとうなおひさせんせい)、安藤真先生(あんどうまことせんせい)が発明(はつめい)した「ラジアルラインスロットアレーアンテナ」というすごいアンテナを搭載(とうさい)している。金属板(きんぞくばん)に「ハの字型(じがた)」の隙間(すきま)を規則的(きそくてき)に刻(きざ)んだ、平面(へいめん)アンテナで同(おな)じ性能(せいしつ)のパラボラアンテナより、かなり軽(かる)く作(つく)れる。八木・宇田(やぎ・うだ)アンテナ(魚骨状(ぎょこつじょう)のテレビアンテナ)に匹敵(ひってき)する、世界(せかい)に誇(ほこ)るべき発明品(はつめいひん)だ。
>> 【参考(さんこう)電気(でんき)のデジタル博物館(はくぶつかん)
ラジアルラインスロットアレーアンテナについて(※JAXAクラブから離(はな)れます)
(第5話)ラジアルラインスロットアレーアンテナ

第6話(だいろくわ)につづく
<< 第4話(だいよんわ)

1つもどるこのページの先頭へJAXAクラブトップ